●沖田臥竜(おきた・がりょう)
元山口組二次団体最高幹部。所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、『山口組分裂「六神抗」』365日の全内幕』(宝島社)などに寄稿。去年10月、初単行本『生野が生んだスーパースター 文政』(サイゾー)を刊行。最新刊『2年目の再分裂 「任俠団体山口組」の野望』(同)が7月下旬に発売される。

「京都府警は乱闘事件に関わったとして、大阪刑務所に服役中だった六代目会津小鉄会の馬場美次前会長も逮捕していたが、前日の7月5日に処分保留で再び大阪刑務所へ移送している。井上親分の勾留期限いっぱいとなる7日の前日に関係先に一斉捜索をかけたのは、京都府警の姿勢、つまり『タイムリミットが来たので井上組長を一旦は釈放するが、捜査はあくまで継続中である』ということを示すためのものだったのではないか」

 これらの捜索が行われたことで、一部の関係者の間では、井上組長らが再逮捕されるのではないかという噂も飛び交ったが、ある神戸山口組系幹部はこんな見方をしていた。

「山健にあらずんば山口組にあらず」とまでいわれるほど山口組の中核団体であり続けてきた山健組には、「団結、報復、沈黙」とのスローガンがある。これについては、かつて二代目山健組組長で五代目山口組組長に登りつめた渡辺芳則組長は「何も物騒なものではない」と取材陣に対して述べている。そして、この言葉の通り、今回逮捕された井上組長をはじめとする山健組幹部らは誰一人として、当局の取り調べに対して口を開かず沈黙を守り続けたと、ある関係者が話している。このことが処分保留につながったようだ。

「今回の逮捕者の中には、事件後に神戸山口組から離脱し、任俠団体山口組に参加した元四代目山健組系の組長らもいた。彼らが、井上組長に関する不利な供述をするのではないかという噂も確かにあったのだが、袂を分かったとはいえ、やはり山健組の伝統は脈々と受け継がれており、誰一人として口を割っていない。指名手配されている中田広志会長(四代目山健組若頭、五代目健竜会会長)がいまだに逮捕されていないこともあって、拘留中の誰一人も話さないとなれば公判維持は難しいと検察サイドも判断したのではないか」

 これによって、一連の乱闘事件の発端ともなった、馬場前会長の名前を騙って偽造ファクスを流したという「有印私文書偽造事件」で逮捕されている六代目山口組幹部らや、七代目会津小鉄会の原田昇会長の釈放が予想されている。だが今後、起訴まで持っていくことができなかった京都府警がどのような方針を固めていくのかに関心が集まる。さらなる摘発を続けていくのか否か。それが、3つに分かれた山口組の動向にも影響を及ぼすのではないかという気がしてならない。
(文=沖田臥竜/作家・元山口組二次団体幹部)

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